山中伊知郎「お笑いライヴを行く!」

昼間、いまさらながら映画『この世界の片隅に』をテアトル新宿で見て、夜、新宿ゴールデン街劇場で、稲門シナリオ研究会の後輩の渡部くんが出てる芝居を見る。
 
 千葉県いすみ市にある「いすみ学園」という施設に行ってくる。自閉症を中心として知的障害者の人たちをケアするところだ。
 今、私は作詞家・たきのえいじ先生の本を作るべく動いており、そのたきの先生が23年も前から、この「いすみ学園」の入所者の皆さんによる「歌合戦」を続けている話を、以前から聞いていた。で、今年は2月12日に開催するとのことなので、先生にくっついていったのだ。なぜか現地に行くと、審査員の一人にされていた。
 いや、なかなか楽しかったですよ。
 1チーム10人くらいのメンバーが9チーム出場して、思い思いの歌を唄うのだが、どのチームにも、とにかく一生懸命唄う人、無心に踊る人、それにただ立っているだけで何もしない人がいる。
 私としては、特に、この「ただ立っているだけ」の人たちにとても心惹かれた。
 たぶんその人たちは、舞台の上で「ただ立つ」こと自体が一つの大冒険だったろうな、と想像ができるから。
 よくあるカラオケ大会だと、「プロっぽく唄いこなす」のをよしとするのに対し、ここでは、もう音程もテンポも動きも、一切の規制がないのも心地よかった。
 しかもみんなけっこう楽しそうだった。
 あ、音楽って、こういうのでいいんだよな、と感じた。
 私は社会貢献とか福祉とかには、ほぼ体質的に興味はない。身障者の方を見かけて、ぜひ手助けしたいなんて殊勝な気持ちも持たない。
 ただ、きょうの「歌合戦」を見て、人はひとりひとりみんな違う、どの人には価値があって、どの人にはない、なんてことは決してないのだけは、改めて思った。
 「ただ立っている人」の存在感て、実に圧倒的なのだ。
 カネ儲けに走るでもない。名前をあげたり、女の子にモテたいでもない。「ただ立っている」だけでも十分に生きている価値はあるんじゃないか、と唐突ながら、そこまで考えさせられた。
 また、「ただ立っている人」たちって、みんな、いい顔してるんだよねぇ。